電子カルテ …
次に注意すべき点は,リモートメインテナンスそのものが,人的なセキュリティホールになる可能性があるということです。 一般的に,電子カルテが動作するパソコンは,インターネット回線と常時接続されません。さらに,電子カルテにはなんらかのアクセス制限が設けられますので,通常は,外部からカルテを開けられたり,操作されたりすることはありません。しかし,リモートメインテナンスだけは例外です。私たちからみれば,「最高のアクセス権限を持った他人」から,カルテを閲覧されていることになります。
リモートメインテナンスは,サポートがダイヤルアップで接続し,サーバー,場合によってはクライアントパソコンに,リモートコントロールソフトと呼ばれるソフトを使ってログオンし作業を行います。リモートコントロールソフトとは,パソコンの画面をネットワークでつながった別のパソコンから見ることができるソフトのことですが,アクセス権さえあれば,遠くにあるパソコンの画面を盗み見たり,そのパソコンのプログラムやデータを,手元にあるパソコンのものと同じように扱うことができますので,使いようによっては非常に危い代物です。つまり電子カルテの内容を閲覧したり盗用したりすることが可能だということで,この危険性は,遠隔操作されるパソコンのデスクトップ上で,マウスカーソルが勝手に動き回っているるさまを一度でも見れば,はっきり実感できると思います。
このような危険性を考えると,トラブル時の保守はできる限り断り,サポートに直接出向いてもらうように頼むべきです。なぜならほとんどの場合,リモートで行うメリットが,私たちユーザーではなく,メーカーの側にあると思うからです。また緊急時以外は,ファイルの電送や郵送等他の手段を使うのが良いと思います。
とはいえ,サポートセンターが近くになければ仕方なく使わざるをえませんが,その場合は,サポートする会社のセキュリティポリシー,サポートする人の情報とアクセス権,接続するマシンのハードとソフトの環境をはっきり示してもらうことと,メインテナンスのたびに,誰が,いつ,どこから,何をしたかの報告をしてもらうことが必要です。患者様本人以外に紙カルテを閲覧してもらう手順を考えてもらえばこれでもまだまだ足りないことがわかるでしょう。
あたりまえのことですが,ソフトは私たちユーザーの持ち物であり,データは患者様のものです。「リモートメインテナンスによる迅速なサポート」とか,「個人情報保護法に基いた安全な保守」ということばを聞かされても,それだけで安心してはいけません。当院でもリモート接続後に多くのトラブルが起こっています。